夏になると海に出かけるオカヤドカリ
南西諸島では、オカヤドカリはよく見られる身近な生き物です。非常に大きな個体が歩いていることもあり、その姿はかなりの迫力があります。でも、近づくとすぐに殻の中に体を引っ込めるところは、ヤシガニよりもシャイな感じがします。今回はオカヤドカリの生活史についてです。

浜辺からは離れられない生活史

オカヤドカリと名前がついていますが、以前紹介したヤシガニと同様、交尾は陸上で行いますが、幼生は海に放たれた後1ヶ月ほどは海中を漂うプランクトンとして生活します。そのため、上陸後の成体も、少なくとも夏前後の繁殖期には海に向かう必要があります。小さいうちは海岸付近で見つかることが多く、石垣島や竹富島の浜辺を歩いていると、数百匹と思われるヤドカリがミチミチと音を立てながら一斉に海岸とは反対方向の海岸植生の中に逃げ込む様子が観察されました。

すべてを確かめられたわけではありませんが、そのほとんどがオカヤドカリ属の幼体と考えられます。一方、比較的大きな個体は、海岸だけでなく海岸付近の森林内でもみられました。

オカヤドカリ属は海からかなり離れた場所でも見つかることがあります。石垣島ではオカヤドカリ Coenobita cavipesが、標高約360m、海岸から直線距離で2.5kmも内陸に入った森林内でも発見されており、河川を伝って稚ガニが内陸部に侵入したと考えられています。
また、種によっては海岸から10 km以上離れた内陸部でも見つかるようです。しかし、繁殖のためには海へ戻らなければならないため、どれほど内陸に進出できるかは、海まで戻ることができる距離によって制約を受けていると考えられます。
ヤシガニほどは、大きくならないオカヤドカリ

オカヤドカリ属の寿命は、最大で30年ほどと考えられており、生きている間は、2週間から数ヶ月に一度脱皮を繰り返し大きくなり続けます。しかし、同じように長寿命で陸上で生活するヤシガニが最大4kgほどになるのに対し、オカヤドカリ属の中で最大級といわれるオオナキオカヤドカリ Coenobita brevimanusでも、最大サイズは200gほどです。

オカヤドカリは、貝殻をつけないヤシガニに対し、貝殻に収まり続ける必要があるため、大型化する際の制約になっていると考えられています。ちなみに、貝殻を背負ったヤドカリの中で最大と考えられているものは、一生を海で過ごすオオヤドカリ Petrochirus diogenesで、重さは1kgほどになります。
【参考文献】
三田哲也・浜崎活幸(2019)石垣島於茂登岳におけるオカヤドカリ Coenobita cavipes の観察記録.Cancer,28:e129–e130.