毒グモってなに?
前回は、咬傷被害が報告されるカバキコマチグモについてのお話でした。今回は、クモの毒についてのお話です。
毒蛇と毒蜘蛛

毒蛇という言葉と同様に、毒蜘蛛という言葉があります。ヘビの中で毒牙をもち毒を注入する種、つまり毒ヘビは全体の25%くらいと言われています。一方で、クモは、一部例外もありますが、ほぼ100%の種が毒を持ちます。つまり、毒を持っているかどうかで判断すると、クモはほぼすべて毒グモです。しかし、ほとんどのクモは人に対してその効力を発揮することはありません。毒牙が人の皮膚を貫通しなかったり、そもそも、ヒトには作用しない毒を持つ種が多いからです。そのため、一般には毒を使った攻撃が人に被害を与える種のみを毒グモと呼びます。
ちなみに、日本でクモの毒による被害が問題になるのは、在来種のカバキコマチグモと外来種のセアカゴケグモとハイイロゴケグモくらいで、非常に限られています。
もう一つちなみに、毒蜘蛛というとタランチュラ(オオツチグモ科)が有名ですが、恐ろしげなる見た目とは裏腹に毒性はそれほど強くなく、死亡事例はないとされています。
クモはどうして毒牙を持っているの?

クモは、口の前に鋏角(きょうかく)と呼ばれる一対の付属肢をもち、その先端には鋭い牙があります。牙の先端近くには小さな開口部があり、ここから毒が分泌されます。クモは鋏角で獲物にかみつき、毒を注入して動きを止めます。
代表的な肉食昆虫であるカマキリは、大あごで獲物をバリバリとかみ砕いて食べます。

一方、クモは固形物をほとんど食べることができません。口から消化液を分泌して獲物の体内を液状にし、それを吸い取って栄養を得ます。そのため、食事にはカマキリよりも長い時間がかかります。カマキリが暴れまわる昆虫を押さえつけて食べている様子をよく見かけますが、クモが同様のことを行うとすると、ものすごく長い間暴れる昆虫と格闘することになります。

同様に、消化液を獲物に流し込み体外消化して食べるサシガメの仲間も、まず獲物に毒を注入して動きを止めます。

このように、毒は獲物を素早く制圧し、安全に食事をするための重要な道具であり、ほとんどのクモにとって欠かせないものなのです。