子煩悩なクモ、カバキコマチグモ
カバキコマチグモは、日本で最も咬傷被害が多い在来種のクモです。しかし、子どもを守り、自らが餌になるという子煩悩な一面もあります。
カバキコマチグモとは?
カバキコマチグモ Cheiracanthium japonicum は、フクログモ科コマチグモ属のクモです。メスは10-15mm、オスは9-13mmほどの大きさです。カバキコマチグモは漢字で樺黄小町蜘蛛と書き、「樺黄」は、茶色がかった黄色を意味し、「小町」は小野小町のように美しいためという説があります。中国、朝鮮半島、日本に分布し、国内では北海道から九州で見られます。平地から山地の草原や河原、樹林周辺などに生息します。網は張らず、夜間に歩き回って昆虫などを捕食します。昼間はススキなどのイネ科の葉を巻いて巣を作りその中に潜みます。
巣を作り、卵を守り、子に食べられる母グモ
産卵もイネ科の植物の葉を巻いて産室を作りその中に行います。

100個ほどの卵を生み、卵は10日ほどで孵化します。孵化した子ぐもは、一回目の脱皮後、一斉に母グモの体液を吸いはじめ、半日程度で吸い尽くします。母グモは体液を吸われ始めて約30分後に絶命するまで、巣の中で子どもを守り続けます。

どうしてカバキコマチグモは噛むの?
在来種では、ほぼ唯一危険なクモといえるカバキコマチグモですが、どうして咬傷被害が多いのでしょうか。まず、カバキコマチグモの毒牙が人の皮膚を貫いて毒を注入できるほどに十分大きいことが要因の一つです。クモは小さいものも多いため、そもそも人の皮膚に毒牙を食い込ませることができない種も多くいます。
また、巣を作り、子を守ることも重要な要素と考えられます。多くのクモは、大きな人間に対して戦うより逃げるという戦略をとります。体に卵をつけて卵を守るコモリグモの仲間などは、自分が逃げ切ることができさえすれば、卵も一緒に守ることができます。

一方、カバキコマチグモは巣を作り、巣に子どもがいるため、自分が逃げることができても子どもを守ることができません。一般に、クモは数回産卵することも多いですが、基本的に一度しか産卵せず、最期には自らの身をも子どもに捧げるカバキコマチグモは、自分の子孫を残すために命がけで天敵と戦う場合が多いと考えられます。カバキコマチグモに噛まれる状況として、草むらに入って巣の近くにいるメスに噛まれることが多いのはこのためです。

一方で、繁殖期にメスを探して行動範囲を広げたオスが人家に入り込んで靴や服の中で逃げ場を失い、噛むケースもないわけではありません。