株式会社バイオームの起業ストーリー|創業の背景と事業への想い
「このままでは、地球の未来は危ういのではないか」
株式会社バイオーム代表取締役の藤木庄五郎がそう感じたのは、大学時代、ボルネオ島で約2年間の調査をしていたときのこと。
アマゾンと並ぶ生物多様性の宝庫であるその地で、藤木は2年以上にわたりキャンプ生活をしながら調査を続けました。
そこで目にしたのが、360度、地平線まで続く森林伐採の跡地。そこは、本来なら樹高70mにも達する巨大な熱帯林が広がり、野生生物の天国であるはずのその場所でした。

この光景を目の当たりにした経験が、「生物多様性の保全のためには、何ができるのか」という問いとなり、やがてバイオームの創業へとつながっていきます。
大学生時代:ボルネオ島でのキャンプ生活
ボルネオ島の熱帯林はひどくいびつな状況にある。
荒れ果てた場所があるかと思えば、すぐ隣に原生林が広がっていることもある。無計画な伐採による結果だ。
そうした様々な荒れ具合の森林に40mほどの調査区を設置し、その中に生えている全ての樹木の大きさと樹種名を記録していくのが調査の目的だ。ボルネオ中の森林にそうした調査区をこれまでに300箇所以上設置してきた。(藤木はこのデータを用いて生物多様性を定量化するアルゴリズムの開発に成功し、その成果で博士号を取得した。)




無計画に伐採された熱帯雨林
調査の中で、ひときわ衝撃を受けたのは、360度地平線まで皆伐され尽くした熱帯林の跡地だった。

原生林をよく知る藤木には、本来そこが野生生物の天国だったであろうことが容易に想像できた。と同時に、同じ地球上で生きているひとりの人間として、申し訳ない気持ちになった。

この光景が今も藤木の心の原風景となっている。地球の未来は危ういのではないかと肌で感じた瞬間だった。
下の地図は、ボルネオ島周辺の森林の状況を表しており、地図の赤くなっている部分は2000年以降に森林が消滅した場所を意味している。

現在、白亜紀に起こった恐竜の絶滅と同等の大量絶滅が起こり始めていると多くの生物学者の間で考えられている(ex. Barnosky, A. D. et al.2011)。こうした生物の絶滅は、生活インフラとしての地球システムを崩壊させることは間違いない。経済的損失は少なく見積もっても450兆円/年になると言われている(国連環境計画2010)。
環境保全は人類の利益
こうした背景の中で、環境への配慮とその証明は、現代の行政・企業にとっては避けられない課題になってきている。しかし、実は環境(特に生物多様性)の統一された評価方法は全くと言っていいほど確立されておらず (Fujiki et al.,2016,2017)、行政・企業・様々な団体が手探りで環境保全に取り組んでいるというのが現状だ。
大きな原因の一つは「生物分布データ」の不足だと藤木は考えている。
あらゆる情報がインターネットに溢れているこの時代においても、生物の情報は驚くほど少なく、一体どの生物が絶滅の危機にあるのか、どこにどんな生物が生息しているのか、といった基本的なことさえよくわかっていないのだ。
藤木は博士号取得後、世界的な生物・環境のデータベースを創ることを目指して株式会社バイオームを設立。環境保全のためのビジネスプラットフォームをつくることで環境問題解決のための支援ができると考えたからだ。
環境は破壊され、利用されることでお金になり、誰かの生活を支えている。それは当然の営みで、決して批判されるものではない。しかし、環境は破壊されることでしか利益にならないわけではなく、保全されることもまた、長い目で見れば人類の利益になるのである。
ただ現在、その利益を直接的にお金に換える仕組みはほとんどなく、環境の保全を大きく遅らせているのが実状である。藤木は、環境の保全が直接的に人々の利益につながる仕組みをつくることこそが何より大切だと考えている。
そこで環境保全をビジネスとして成り立たせる試みとして藤木が取り組んだのが、世界中の生物の情報をビッグデータ化する事業である。特に現在は、生物の名前を自動で判別できる独自の技術を応用して、いきものコレクションアプリBiomeを開発している。
このアプリは、いきものを見つけて図鑑にコレクションしていくアプリで、様々な生物が身近にいることの価値を全ての人に感じてもらえるものになると考えている。
まだまだ課題は山積みではあるが、環境の保全を“社会の当然”にするべく、株式会社バイオームは事業に取り組んでいる。
株式会社バイオームについて
2017年5月31日設立。
生物多様性をキーワードとして、位置情報システムや画像解析技術を応用したデータ解析サービス事業と、ユーザーが出会った“いきもの”を集めて世界を冒険するコレクションアプリ事業を展開。
https://biome.co.jp/
代表取締役:藤木庄五郎
1988年7月生まれ。大阪府立天王寺高校出身。2012年3月京都大学農学部卒業。2017年3月京都大学大学院博士号(農学)取得。2017年5月(株)バイオーム設立、代表取締役就任。
熱帯ボルネオ島にて2年以上キャンプ生活をしながら、衛星画像解析を用いた生物多様性定量化技術を開発。2017年3月京都大学大学院博士号(農学)取得、同年5月(株)バイオーム設立、代表取締役に就任。生物多様性の保全が人々の利益につながる社会をつくることを目指し、世界中の生物の情報をビッグデータ化する事業に取り組む。