クモ、電気で空を飛ぶ
雲は空に浮かびます。蜘蛛も空に浮かびます。それもなんと電気も使います。
バルーニングとは?

クモの幼体やガの仲間の幼虫の中には、糸を出して空を飛び、移動するものがいます。その行動をバルーニング Ballooningといいます。Balloningは英語で気球で空を飛ぶことを意味します。ハエトリグモ、コモリグモ、タナグモ、ジグモ、アシダカグモ、アシナガグモの仲間など、多くの分類群のクモの幼体がバルーニングをすることが知られています。また、小型の種は、成体になってもバルーニングをすることが知られています。高度4000mの空中でクモが見つかったり、数百キロメートルを移動した例が報告されています。
絡まらない糸

クモは、バルーニングをするにあたって糸を複数本出します。細長いクモの糸を何本も出すと、すぐに絡まりそうなものです。ところが、一匹のクモから出たクモの糸は、不思議なことに放射状に広がり続けます。それは、静電気の力によるものです。クモの糸は、静電気によって互いに反発しあうため絡まないのです。。
バルーニングをする条件は?
バルーニングは晴天時だけでなく、曇天や雨天、霧の中でも観察されていますが、どのような天気であっても一貫して重要な条件は、風速3m/s以下の微風です。たんぽぽの綿毛のように、単純に晴れた乾燥した日に強い風に吹き飛ばされて飛ぶわけではないようです。
クモは電気も使って飛ぶ
クモのバルーニングにおいて上昇気流が重要であることは、チャールズ・ダーウィンも指摘しているほど古くから知られていましたが、近年、電場も非常に重要であることが示唆されています。
実験下では、電場を発生させると空中のクモが上昇し、電場の発生を止めるとクモが下降することが観察されています。また、強度の電場を与えるとクモは脚を伸ばして腹部を上方に突き出すバルーニングの準備姿勢をとることが報告されています。
自然環境下では、雷雲や霧などが通過する時には電場が強まります。また、曇天時や木の枝の先のように尖った場所では、特に電場が強化されます。クモはそのような環境で、飛び立つ前の姿勢をとります。つまり、クモは、飛行に風だけではなく電気の力を使っているため、電場が強くなる曇天や雨天などでも飛ぶのに適した条件が揃うのです。
【引用文献】
Morley, E. L., & Robert, D. (2018). Electric Fields Elicit Ballooning in Spiders. Current Biology, 28(14), 2324-2330. https://doi.org/10.1016/j.cub.2018.05.057